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ポリープ様声帯とはその重症型で、声帯粘膜が両側とも全体的に腫脹し、どら声様の低い声となる。
声帯は気道の最上部にあり門を形成しているので、ひどいときには呼吸困難を伴うこともある。
したがって、項声、呼吸の両症状を改善するため多くの場合手術が必要となますね?」療可能な耳鼻科疾患である以上、何とかしてMさんの美声を取り一戻してやろうと決心したのは、決してMさんの美貌のせいばかりではない。
私は何度かMさんの店へ行くたびに、説教じみた口調とならないように気をつけながら、トータル・バランスによる術後療法のコントロールの可能性について説明した。
「酒・タバコ・おしゃべり。
この三つがポリープ様声帯発生の三要素です。
心当たりありますか?」「おおいにあります」水割りを作りながら、わざと患者の口調で言うMさんの言葉に、店じゅうに笑いが起こ「前の手術のとき、主治医の先生はなんと言いましたか?」「『できたら全部やめてください』と…」「できるわけないですよね」私がMさんの言葉を先取りして言うと、周囲の笑い声はさらに高まった。
「完全にやめるのは無理でしょうから、こうしたらどうでしょう。
酒、タバコ、おしゃべりを一日交代で我慢するというのは?」「そう、休肝日の考え方と一緒です。
もともと酒・タバコ・おしゃべりの三位一体攻撃が声帯にとってよくないと考えられますから、これらのタッグを領ハラ翁ハラにしてやればいいわけです。
しかも、『三つを我慢』より、『一つだけ我慢』のほうができそうでしょう」「できそう、できそう」「それでは、今日は発声禁止の日としましょう。
おしゃべりやめ」Mさんのズッコケ方が大げさであったので、その場の誰もが爆笑した。
そうして術後の後療法のメドを立てたうえで、Mさんにはあらためて外来に来てもらい、検査のうえその年の秋に入院、ラリンゴマィクロ手術を行った。
一週間の発声禁止の後、発声再開したMさんの声は少女のように可愛らしくなった。
「一日交代の禁習慣」を確認し、退院してもらった。
私は退院時、店でのMさんを想像し、「面白そう!休肝日みたい」Mさんは今度は真剣に興味を持たれたようであった。
もともと酒もタバコも職業柄おつきあいしているだけの部分が大きいので、全部をやめるのは無理にしても、そのうちの一つずつを順番に我慢するというのは、目立たずにできるのではないかと考えたのである。
「現在、Mさんの手術から約三年が経過し、術後の娘声は若干影をひそめつつあるものの、ポリープ様声帯の疾患としての再発は回避されているようである。
サービス精神旺盛なMさんのことであるから、またいつかもとの生活習慣に戻る可能性がゼロになったとは言えないかもしれない。
しかし、現在のところ前二回の手術でなしえなかった後療法のコントロールを、トータル・バランスの考え方を用いることによりなしえたというのは事実である。
悪習が再開し、ポリープ様声帯が再発しないよう"往診″を続けようと思う今日このごろである。
は言った。
「先生、面倒くさいので毎日三分の一ずつがまんしてはダメですか?」私は「しめた!』と思った。
これこそトータル・バランスの第一の法則による治療習慣のコントロールの考え方そのものであったからである。
「かまいません。
全部を三分の一ずつ我慢できれば、もう手術しなくていいと思います物陰で笑いをこらえた。
一カ月後、外来に来る暇がないMさんの店を"往診″すると、待ちかねたようにMさん診断。
扇桃肥大、睡眠時無呼吸症候群ポリープ様声帯と同様、手術の後療法が手術そのものの効果を左右する耳鼻科疾患として、いびきの重症型である「睡眠時無呼吸症候群(OSAS)」がある。
いびき(既声)は英語で9日言い(スノァリング)と言い、一徴候名であるが、いびきの最中に呼吸の停止を伴うようになると、「睡眠時無呼吸症候群」という立派な病名がつくことになる。
いびきはそもそもどのように発生するのであろう。
睡眠中は全身の筋肉は弛緩する。
また臥位をとるため、上気道(鼻から喉にかけて)に対して重力がかかる。
そうすると、大きな筋肉の固まりである「舌」がこれらの影響を受けて、舌根沈下を起こす。
ついで影響を受けるのは、いわゆる"ノドチンコ"の周辺の軟こうがいきようさく口蓋といわれる部分で、この部に狭窄が起こりやすい。
いびきのうち高音のものは、舌根沈下や房桃肥大による「狭窄型いびき」で、低い地鳴りのようないびきは「振動型いびき」であるといわれている。
その他にも鼻閉や喉頭(ノドポトヶ付近)に原因のあるいびきもあるが、ほぼこの二つのタイプのいずれかに当てはまると言っても言いすぎではない。
「狭窄型いびき」は舌根部や肩桃付近のいわゆる"口峡″の狭窄によるいびきであり、これに肥満が加わるといびきは猛烈になり、数十秒間気道の完全閉塞をきたす場合もある。
これが「睡眠時無呼吸症(OSAS)」というものなのである。
OSASは、その極度に浅い睡眠のため、昼間に強い傾眠傾向(眠気のためにうつらうつらしていること)を呈し、車の運転などに支障をきたす。
小児のOSASは馬桃肥大に依存する割合が比較的高いので、扇摘術(馬桃摘出術)のみで劇的に症状が消失することが多いが、成人、特に肥満の人のOSASは扇摘術だけでは不十分で、術後かなりダイエットをして、口峡を広くしてやる必要があるのである。
具体例を紹介しよう。
三四歳のトラック運転手のHさんにとって、この「睡眠時無呼吸症(OSAS)」の治療は生命にかかわる一大事であった。
彼を最初に診察したのは四年前、奥さんと、なぜか職場の上司に連れられて外来を受診されたときである。
最初に口を開いたのは、肥満体のHさんでも小柄な奥さんでもなく、Hさんと対照的に痩せて目がギョロッとした感じの彼の上司であった。
「先生、何とかしてやってください。
このままではいつまたこいつが事故るかと気が気ではありません」第一印象とは若干異なり、心から心配でたまらないといった様子の上司の言葉が聞こえたのか聞こえないのか、Hさんは無表情のままポーッとこちらを見ていた。
しかしよく見ると、その視線は私を突き抜けてはるか遠くを見ている感じであった。
大げさに言えば、Hさんはその一○○蛇を優に超すであろう巨体に似合わず、生気というものがあまり感じられないのであった。
後からわかったことであるが、このときのHさんの生気のなさこそ、「睡眠時無呼吸症=OSAS」による傾眠傾向によるものだったのである。
上司と奥さんが交互にこれまでの経過を話してくれ、次第に事情が明らかとなっていった。
Hさんは元来まじめな性格で、今の仕事について丸五年になるが、一度も無断欠勤をしたことがないという。
仕事場の皆がHさんのことを心配しはじめたのは、半年前に彼が軽い追突事故を起こしてからであった。
外来に付き添ってきた上司が、そのとき助手席に乗っていた。
彼の言葉一瞬ハンドルに突つぶして寝とったんですよ」彼は一連のことを奥さんに話した。
奥さんは驚きあきれたが、事故を起こされてはたまらない。
近所の主婦仲間にいろいろ話を聞き、「もしかして脳に何か異常があるのではないか?』と思いはじめ、近所の脳外科で脳の精密検査をしてもらうことにした。
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